米国との共同開発で最終調整に入ることが判明したF2戦闘機の後継となる次期戦闘機。政府は共同開発の相手国として英国を選ぶ方向に傾いていた。一転して米国との共同開発にかじを切ったのは日本主導という次期戦闘機開発の「絶対条件」を満たせる可能性が高いと判断したのが最大の理由だ。
日本主導を重視するのは、それが実現できなければ国内の戦闘機生産・技術基盤を維持できない恐れが強いためだ。国内の戦闘機生産は平成23年にF2の最終機を納入したのが最後で、戦後再開して以降初めて途絶え、生産ラインの維持と技術者の存続は年を追うごとに厳しさを増している。
日本主導には機体の主要部分の開発を担い、将来的に能力向上の改修ができる自由度と拡張性を確保する意義も含む。共同開発の相手国から技術情報が開示されず、改修がしにくいブラックボックスを極力少なくすることも欠かせない。
英政府は技術情報の開示に寛容とみて政府は昨年半ばまでは英国との共同開発に前のめりだったが、英政府は自国企業に仕事を割り振ることに躍起で日本主導には持ち込めないとの見方が強まった。逆に「ブラックボックスだらけになってしまう」(防衛省幹部)と拒否感が強かったF22とF35を基にした派生型の共同開発案を米政府に撤回させたことで流れが変わった。
昨年半ば以降は日米両政府間で(1)主に中国をにらんだ脅威認識(2)日米の相互運用性を含めた運用構想(3)企業間協力-について協議を重ね、日本主導を担保しやすいとして日米共同開発に針路を定めた。
日米共同開発には苦い教訓もある。戦闘機で初の日米共同開発だったF2では飛行制御のソフトウエアなどの技術情報を米側が開示しない一方、日本側の「虎の子」の技術情報を開示することを迫られ、自衛隊OBは「米側の意向に振り回された」と指摘する。
日米両国企業の作業部会と今後の政府間協議では製造分担率、米側提供技術とブラックボックスの範囲が焦点となる。日本主導の実現に向け、政府にはしたたかな交渉と手綱さばきが求められる。(半沢尚久)
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